

「今年の春、給料が上がったはずなんだけどな……」
通帳を眺めながら、そうつぶやいた人は少なくないはずです。
2026年の春闘の賃上げ率は5.01%。3年連続で5%を超え、物価を差し引いた実質賃金も7月まで7カ月連続でプラスになりました。数字だけ見れば「ようやく給料が物価に追いついた」年です。
ところが、その同じ年に、もうひとつの数字が静かに上がっています。住宅ローンの金利です。
日銀は2026年9月、政策金利を1.25%に引き上げました。約31年ぶりの高さです。そして10月、大手銀行が相次いで住宅ローンの変動金利を引き上げ、平均は1.3%を超えました。
この記事は、こんな方のために書きました。
先に結論をお伝えします。いま慌てて何かを決める必要はありません。でも、「何もしない」でいるのが一番危ない時期に入っています。その理由と、今日からできる対策を5つ、順番にお話しします。
まずは、給料の話から現実を見てみましょう。
月給30万円の人が5%上がると、額面で約1万5,000円のアップです。ここから税金や社会保険料が引かれるので、手取りで増えるのはおおよそ1万1,000〜1万2,000円くらい。
「5%」と聞くと大きく感じますが、毎月の財布に入ってくる金額にすると、実はこれくらいなんです。
次に、住宅ローンの側を見てみます。
ローン残高3,000万円・残り30年、いまの金利が0.8%の家庭を例に計算してみました。
金利毎月の返済額今との差0.8%(今)約93,800円―1.3%(+0.5%)約100,700円約6,900円増1.8%(+1.0%)約107,900円約14,100円増
金利が0.5%上がるだけで、手取りの昇給分の半分以上が消えてしまいます。1%上がれば、昇給分がまるごと消えてもおかしくありません。
「給料が上がったのに余裕がない」というモヤモヤの正体は、ここにあったのです。
もっと長い目で見るとどうでしょう。同じ3,000万円・30年を、ずっとその金利のまま返し続けた場合の利息の合計です。
0.8%と1.8%の差は、約510万円。子ども1人の大学4年間の学費に近い金額です。金利の「たった1%」が、人生のお金の計画をひとつ動かしてしまうのです。
「でも、うちは返済額が変わってないよ?」
そう思った方、実はここに大きな落とし穴があります。
変動金利の住宅ローンの多くには、**「5年ルール」と「125%ルール」**というしくみがあります。
一見、借りている人を守ってくれる、やさしいルールに見えますよね。
ところが、毎月の返済額が同じでも、その中身は変わっています。
先ほどの例(残高3,000万円・毎月93,800円返済)で、金利が0.8%から1.8%に上がったとしましょう。
金利0.8%のとき金利1.8%になったとき毎月の返済額約93,800円約93,800円(変わらない)うち利息約20,000円約45,000円うち元本約73,800円約48,800円
毎月の返済額は同じなのに、元本の減り方が月2万5,000円も少なくなっているのです。
つまり「返済額が変わらないから大丈夫」と思っている間に、ローンの残高はじわじわと減りにくくなっています。そして5年後、返済額の見直しのタイミングで、まとめて負担がやってきます。
さらに金利が大きく上がって、利息が毎月の返済額を上回ってしまうと、払いきれなかった利息が「未払利息」として残ってしまうこともあります。
変化が「見えない」ことこそが、変動金利の一番のリスクなのです。
もうひとつ、知っておいてほしい変化があります。
これまで、「住宅ローン控除があるから、繰上返済はしないほうが得」とよく言われてきました。控除は年末のローン残高の0.7%が戻ってくるしくみなので、金利が0.7%より低ければ、借りたままのほうがお金が増える、いわゆる「逆ザヤ」の状態だったからです。
ところが、変動金利が1.3%前後になった今、金利が控除率の0.7%を上回るケースが一気に増えています。「借りておいたほうが得」という前提が、静かに崩れ始めているのです。
ここからは、具体的な対策を5つご紹介します。上から順に、手軽にできるものです。
いちばん大事で、いちばん簡単な対策です。自分のローンの数字を4つだけ確認してください。
銀行のアプリやネットバンキング、毎年届く「残高証明書」で確認できます。所要時間は10分ほどです。
実は、住宅金融支援機構の2026年1月の調査でも、変動金利のリスクについて「理解が不十分」「不安がある」と答えた人は4〜5割にのぼっています。知らないまま不安でいるより、数字を知って安心するほうが、ずっと楽になります。
数字がわかったら、次は「もし金利が1%上がったら?」を計算してみましょう。銀行のサイトにある返済シミュレーターを使えば、すぐに出せます。
判断の目安はシンプルです。
ポイントは、「今の家計」ではなく「5年後の家計」で考えること。子どもの進学や車の買い替えなど、これからの出費も一緒に思い浮かべてみてください。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい考え方です。
給料が上がった分は、生活費に溶かさない。
昇給で増えた手取り1万円を、最初から「金利上昇対策の口座」に自動で移してしまうのです。給料日に自動で振り替える「先取り」の設定にしておけば、意志の力はいりません。
金利が上がらなければ、そのお金は貯金として残ります。金利が上がったら、増えた返済にあてればいい。どちらに転んでも損をしない、いちばん手堅い守り方です。
架空の事例:Aさん一家(夫婦共働き・子ども2人)の場合 夫の昇給で手取りが月1万2,000円増えたAさん。これまでなら外食や習い事で自然に消えていたお金でした。今年からは給料日に「金利対策口座」へ自動で振り替えることに。1年で約14万円がたまり、「金利のニュースを見ても、前ほどドキッとしなくなった」と話しています。
ためたお金がある程度になったら、繰上返済も選択肢に入ります。
先ほどの例(残高3,000万円・金利1.3%・残り30年)で、100万円を「期間短縮型」で繰上返済すると、利息が約47万円減り、返済期間が1年以上短くなります。
ただし、手元のお金を全部入れてしまうのはNGです。
「守りのお金」を確保したうえで、余った分を繰上返済にあてる。この順番を守れば、家計がぐらつくことはありません。
最後は、いちばん大きな決断です。
いまメガバンクの10年固定は約3.8%、フラット35は約3.5%。変動金利との差は2ポイント以上あり、過去最大の開きになっています。
先ほどの例で計算すると、
毎月4万6,000円の増額です。「安心を買う」にしては、かなり高い保険料ですよね。
つまり今は、「不安だから、とりあえず固定に」と動くと、かえって家計を苦しめてしまう可能性が高い時期です。固定への切り替えや借り換えは、次のような人に向いています。
借り換えには事務手数料や登記費用などで数十万円〜100万円前後かかることもあります。「毎月の差額」と「かかる諸費用」を並べて、元が取れるかどうかを必ず確認してから決めましょう。
ここまで読んで、「結局うちはどうすればいいの?」と思った方のために、ざっくりと分けてみます。
今すぐ動くべき人
落ち着いて様子を見ていい人
大切なのは、「様子を見る」と「放っておく」は違うということです。数字を知ったうえで様子を見るのは、立派な戦略です。
多くの銀行では、変動金利の見直しは年2回(4月と10月)です。さらに5年ルールがある場合、毎月の返済額はすぐには変わりません。ただし返済額が同じでも、利息の割合が増えて元本の減りが遅くなるので、影響は見えないところで始まっています。
一概には言えません。今は変動と固定の差が2ポイント以上と過去最大で、固定に替えると毎月の返済額が大きく増えるケースが多いです。まずは「金利が1%上がっても家計が回るか」を試算し、回らない場合に固定への切り替えを検討するのがおすすめです。
まず生活費の6カ月分を確保することが先です。そのうえで、ローン金利が低いうちは新NISAを続け、金利が上がってきたら余ったお金の一部を繰上返済にあてる、という「両方少しずつ」が現実的です。住宅ローン控除の控除率(0.7%)をローン金利が上回っている場合は、繰上返済の効果が大きくなります。
安心とは言い切れません。返済額が変わらない間も、利息が増えた分だけ元本の減りが遅くなります。5年後の見直しで返済額が最大1.25倍に上がることもあるので、今のうちに備えておくことが大切です。
最後に、この記事を読み終えたら、今週中にやってほしいことを3つだけ。
合計30分です。コーヒー1杯を飲む間に、将来の数百万円を守る準備ができます。
31年ぶりの金利上昇と聞くと、つい身構えてしまいますよね。でも、金利が上がる時代は、裏を返せば給料も上がっていく時代です。大事なのは、上がった給料を「なんとなく」使ってしまわないこと。
家は、家族が毎日帰ってくる場所です。その場所を、不安ではなく安心の象徴にしておくために。まずは今夜、銀行アプリを開くところから始めてみてください。

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著者紹介(橋本 正人)
著者は、AIの活用で企業業務に従事してきており、その後、独立しプロンプトの技術であるプロンプトエンジニアを取得し、生成AIを活用したさまざまな日常業務の改善による生産性向上を提案しております。
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ほのぼの画家Renくん
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