

10年前の4月。真新しいスーツを着て、少し緊張しながら乗った朝の電車。「社会人になったんだ」と、窓に映る自分がちょっと誇らしかった。
そして今朝。同じ路線、同じ時間、同じ車両の同じあたり。違うのは、スーツが少しくたびれたことと、窓に映る自分がずいぶん疲れた顔をしていることくらい——。
ふと、こんな疑問が頭をよぎりませんか?
「この10年、毎日電車に揺られて、自分には何が残ったんだろう」
この記事では、満員電車で過ごす時間を10年、そして人生という長いものさしで測り直します。そのうえで、満員電車を「降りた人」の10年後に何が起きたのか、そして降りても貯金が増えなかった人との違いはどこにあったのかを、データと試算でひもといていきます。
まずは、あなたが電車の中で過ごしてきた時間を数字にしてみましょう。
国の調査によると、往復の通勤時間は全国平均で79分。首都圏はさらに長く、東京都で95分、埼玉県で94分、神奈川県では100分にもなります。
往復1時間40分の通勤を、年240日、10年間続けると——
4,000時間と言われてもピンとこないかもしれません。でも、これは8時間労働に換算すると約500日分。つまり、約2年分の出勤日を、まるごと電車の中で過ごしてきた計算です。
さらにものさしを伸ばしてみましょう。
25歳から65歳まで40年間働いた場合の試算では、首都圏の会社員の生涯通勤時間は約1万5,000〜1万6,000時間。神奈川県の場合、約1万6,300時間にもなります。
これを8時間労働に換算すると、約8.3年分の労働時間。24時間ぶっ通しで数えても約1.9年です。
人生のうち丸2年近くを、つり革につかまって過ごす。しかも、その時間に給料は1円も出ません。
「でも、通勤がつらい分、都心の会社でしっかり稼げているから」——そう考える人もいるでしょう。
ところが、海外の経済学者による有名な研究があります。それによると、片道1時間かけて通勤する人が、徒歩で通勤できる人と同じくらい生活に満足するには、約4割多い収入が必要だというのです。
年収500万円の人なら、年収700万円になってようやくトントン。それほどの昇給を手にしている人は、ほとんどいないはずです。つまり多くの人は、通勤のしんどさを給料で埋め合わせきれないまま、毎日電車に乗っていることになります。
10年前、あなたは「10年後もこの電車に乗っているだろう」と想像していたでしょうか。
おそらく、何も変えなければ、10年後のあなたも今日と同じ電車に乗っています。逆に言えば、次の10年を変えられるかどうかは、今日何を決めるかにかかっているのです。
ここで、ぜひ知っておいてほしいデータがあります。
在宅勤務を経験した人への調査では、貯金が**「増えた」人は32.8%。一方で、「減った」人も21.2%**いました。「変わらない」人は44.6%です。
満員電車を降りれば、自動的にお金が貯まるわけではない。これは意外な事実ではないでしょうか。
では、増えた人と減った人は何が違ったのでしょうか。
別の調査では、フルリモートの人ほど「貯金が100万円以上増えた」と答えた割合が高く、出社日数が増えるほど、その割合は下がっていました。増えた人に共通していたのは、次の2つです。
一方、貯金が減った人に起きていたのは、こんなことです。
つまり、満員電車を降りることはスタートにすぎません。浮いた時間とお金に「行き先」を与えた人だけが、10年後に大きな差をつけているのです。
では、降りた後にきちんと行き先を決めた人は、10年でどれくらいお金を残せるのでしょうか。首都圏の会社員をモデルに試算してみました。
出社する日は、ランチやコーヒー、コンビニ、服、交際費などで、自腹のお金が出ていきます。働く人の外食ランチの平均は1,338円、自炊やお弁当なら439円。ランチだけで1日約900円の差です。
在宅になって浮いた出社コストのうち、月1.5万円を新NISAで積み立て、年3%で運用できたとすると——
正社員の副業の時給は中央値で約2,000円。副業にかける時間は、月平均23時間です。
通勤がなくなって浮いた時間のうち、月10時間を副業にあてて月2万円を稼ぎ、それをそのまま貯金すると——
降りても変わらなかった人 降りて行き先を決めた人 浮いた出社コスト 光熱費・ネット通販に消える 新NISAで約210万円 浮いた通勤時間 動画・SNSで過ごす 副業で約240万円 10年後の差 ほぼゼロ 約450万円
同じように満員電車を降りても、10年後には約450万円の差。これが、行き先を決めた人と決めなかった人の違いです。
しかも、この試算には、副業で身についたスキルや実績、浮いた時間で増えた家族との時間、睡眠や健康は含まれていません。お金に換算できないものまで含めれば、その差はさらに大きくなるはずです。
千葉県在住のDさん(42歳)は、32歳の時に都内のIT企業へ転職しました。決め手は「フルリモート可」だったことです。それまでの8年間、片道1時間15分の満員電車で通勤していました。
「最初の半年は、浮いた時間をほとんどゲームに使っていました。貯金もまったく増えなくて」
転機は、ある日なんとなく計算した「通勤していた頃の時間」でした。年間で約500時間。「この時間をゲームに使っていたのか」と気づいたDさんは、2つのルールを決めます。
10年たった今、積立投資と副業の貯金を合わせた資産は、当時の想像を大きく超えました。
「一番大きかったのは、お金よりも『自分で時間の使い道を決められる』という感覚かもしれません。満員電車に乗っていた頃は、毎日が会社に決められていた気がします」
最後に、あなたが満員電車を降りる前に、そして降りた後にやるべきことを、設計図としてまとめます。
数字にすると、「なんとなく疲れている」が「10年で〇〇時間、〇〇万円」に変わります。
満員電車の降り方は、1つではありません。
ここが一番大切なポイントです。
降りてから考えると、浮いた時間とお金は、いつの間にか消えていきます。**行き先は、降りる前に決めておく。**これが、10年後に笑う人の共通点です。
A. 25歳から65歳まで40年間働いた場合、首都圏の会社員の生涯通勤時間は約1万5,000〜1万6,000時間です。神奈川県の場合は約1万6,300時間で、8時間労働に換算すると約8.3年分の労働時間にあたります。
A. 在宅勤務を経験した人の調査では、貯金が「増えた」人は32.8%、「減った」人は21.2%でした。自動的に増えるわけではなく、浮いた出社コストと通勤時間の「行き先」を決めた人ほど、貯金を増やしています。
A. 浮いた出社コストのうち月1.5万円を新NISAで年3%運用すると、10年で約210万円。浮いた時間で副業をして月2万円を貯金すると、10年で約240万円。合わせて約450万円が試算の目安です。
A. 主な原因は、光熱費の増加、ネット通販の利用増、浮いた時間の使い道を決めていないことです。在宅勤務を始める前に、浮いたお金を積立投資に自動で回す設定をしておくと、貯金が減るのを防げます。
満員電車で過ごした10年は、もう取り戻せません。でも、これからの10年は、まだ白紙です。
今日と同じ電車に乗り続ける10年か。満員電車を降りて、浮いた時間とお金に行き先を与える10年か。その差は、10年後に約450万円、そしてお金では測れない「自分で決めた時間」になって表れます。
まずは今夜、たった1つだけやってみてください。
「これまでの通勤時間 × 年数」を、スマホの電卓で計算すること。
その数字に驚いた瞬間が、あなたの次の10年が動き出す瞬間です。

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